毎日、腹痛。(仮)

サラリーマンの憂鬱

10回目

「はじめてのおつかい」という物心ついた頃からやっている長寿番組(不定期放送)が先日放送されていた。

 

簡単に説明すると、3歳〜5歳くらいの小さなお子さんが、生まれて初めて一人きりでおつかいに行く姿を捉えるドキュメンタリータッチの番組だ。

 

 

おつかいの流れは以下の通り。

 

「行きたくない」と泣きじゃくる子どもを優しく諭す親

→初めの一歩を踏み出すも何度も玄関前にいる親を振り返って見てしまう子ども

→やがて、曲がり角を過ぎて子どもの小さな背中は見えなくなる

→子どもは途中寂しくなり泣き出すも、家族のためにおつかいを果たす

→笑顔で両親の元に帰宅する

 

あかん、私もう嗚咽止まらん。

学生時代とかは何とも思わなかったのに。

 

ハリウッド的に言えば「地球に大規模な隕石が接近→誰かが命を懸けてロケット毎隕石に突撃→隕石爆破→地球の危機が去り平和に!」と言った王道パターンよろしくだけど、だが、それが良い!

 

「ほうれん草」の買い物を頼まれていたのに、「レタス」を買っちゃうという子どもながらの天然小ボケを挟みつつ、あんなに泣いていた子どもが店員に「ありがとう」とお礼をして親の待つ家に戻って行く。

そして、帰ってきた子どもを迎えた親は号泣。

子どもは「どうして泣いてるの?」と笑顔で親に問いかける。

スタートとエンドで泣いてる人間が逆転している。

とてつもない、短期集中型成長記録。

テレビ前の私も号アンド泣である。

おっさん化が止まらない。

 

また、おつかい中に流れる挿入歌「しょげないでよBaby」がたまらなく名曲なのだ。

 

失恋中の女子に向けて言ったら一発で「はぁ?」と返答されること間違いなし!である「しょげないでよBaby」というタイトルも、寂しさと闘いながらおつかいする子どもに向けては抜群な効果を発揮する。

 

ちなみに私の初めてのおつかいは、なんと10歳だった。

 

おい!20年前の俺!独り立ち遅すぎるだろ!

テレビの中で4歳の女の子が頑張って親のためにケーキ買ってんだぞ!

10歳って小5じゃねぇか!エロ本読み始めた頃だろ!

 

しかも、夏休みの宿題である防災ポスターに使う画用紙を買いに家から徒歩3分の文房具店に行くという焼け野原の様なドラマ性の無さ。

つくづく自分という人間がなんの取り柄も無い落ちこぼれであると痛感する記憶だ。

 

当然、両親の見送りも出迎えも無かった。

現実は以下の通りだ。

 

私「ただいま。画用紙買って来た」

母「おかえりー」

私「初めて一人で買い物行ったわ」

 

この後の母の「えっ、嘘でしょ、、、この歳で初めてのおつかいだったの、、、?」という驚愕の表情を忘れられない。

そこには感動では無く、哀れみの涙が流れていた。

 

そんなことより、現在東急大井町線中延駅でこの文章を入力しているのだが、やばい、危機的状況だ、お腹の中が暴れまわってる。

理由は後述する。

 

 

 

30年生きてきた。

はじめてのおつかいから20年が経った。

しかし、世の中不思議なものでこの歳になってもまだ初めての経験という出来事が急にやってくる。

 

 

「腹痛サラリーマン、はじめてのバリウム検査」

 

 

本日、健康診断を受けてきた。

そこでは、30歳にして「はじめての」バリウム検査が待っていた。

 

バリウム検査は辛い。

 

そんな噂を耳にしており、昨夜から「嫌だ、行きたくない」と絶望していた。

なんなら、おつかい前の子供より無表情になっていた。

 

 

それでは、はじめてのバリウム検査、早速振り返ってみようと思います。

 

 

まず、採血や身体測定といった例年通りの健康診断をこなす。

視力が年々悪くなっており、ついに両目とも0.6まで低下したことに微妙に凹む。(社会人になるまで両目1.5)

そして、ついに胃部レントゲン室前に待機するよう指示が出された。

 

検査までに注意書きを読むよう4枚の紙を手渡された。

 

注意1「検査前に発泡剤を飲みます。検査終了まで絶対にゲップはしないようにしてください。ゲップをしそうになったら我慢して唾を空気と一緒に飲み込みましょう。(検査時間は約10分です)」

 

唾を空気と一緒に飲み込むだと!?

なんなんだ、この日本語は!!

「雪がしんしんと降る」「しこしこもっちり」以来の絶妙なワードの組み合わせに理解が進まず焦りは募る。

しかも、検査時間10分もかかるのかよ、、、FF7の魔晄炉脱出イベントと同じ時間じゃないか、、、。

何よりも、「炭酸飲むとゲップが出て痛い」という理由で高校生になるまでコーラが苦手だった私、ゲップに耐えられる自信は全く無い。

 

注意2「発泡剤を飲んだ後、バリウムを飲みます。バリウムは基本的に無害ですが、特に敏感な方については蕁麻疹が出る場合があります。」

 

このブログのタイトルから分かる通り、過敏性腸症候群に悩まされている私から敏感という文字を取ったら何も残らないだろう。

痔は残ります。

 

注意3「検査終了後、すぐにコップ3〜4杯分の水を飲み、下剤を服用してください。」

 

げ、げ、げ、下剤だと!!??

生まれてこの方、下痢じゃない日が無いこの私に下剤だと!?

無茶だ!お酒に弱い人に駆けつけ一杯でテキーラを飲ませるくらい無茶だ!

もしくはアンパンマン東京サマーランドに連れて行くくらい無茶だ!!

 

注意4「検査が順調に進むように、以下の通り胃を動かす準備体操をしながら待機してください。(イラスト付き)」

 

イラストに書いてある「お腹を膨らませながらポポポポポと発声する」をやろうとしたが、周りに待機してる人で準備体操してる人なんていないし、誰も注意書き読んで無い、、、。これやったら変人扱い確定だな、、、。

 

 

 

 

 

私「ポポポポポ」

 

 

 

 

 

検査を終えて下剤を飲む初老のおじさんに対して「アイアンハートタカシ」(絶対名前タカシじゃない)とアダ名を付けていたら私の番に。

 

 

医「バリウム検査は初めてですか?」

私「はっ!はい!」

医「では、台の上に立って頂いて右回りに一回転してみましょう。」

 

立ったまま右回りをさせられる。

リハビリか。

 

医「検査中、何回か右回りに回転してもらいます。この動きを覚えておいてくださいね。」

 

右回りくらい分かるわ。

リハビリか。

 

医「じゃあ発泡剤飲んでください。」

 

出た、発泡剤。

一気に飲み干した後、少しの水を飲む。

 

私「あれ、おかしいな、全然ゲップしたくならないぞ、、、。」

 

「ゲップに強い」という超どうでもいい属性をいつの間にか取得していた模様。

なぜ普段役に立たないことばかり知らぬうちに身につくんだ。。。

 

医「次にバリウムを一口飲んでみましょう。」

 

噂では不味すぎて飲めない人もいると言われるバリウムを口に含む。

 

私「あれ、、、これ、飲むヨーグルトじゃん!普通に美味え!」

 

バリウムを美味しく嗜める」という超どうでもいい属性もいつの間にか取得していた模様。

恐らく、私の舌はゴミで出来てる。

 

そして、検査開始。

台が直立の状態から水平に動き出し、それに身を委ねていた。

 

医「何やってんの!右回り早くして!」

 

えっ、いきなり右回り?と右に半回転。

それより、なぜタメ口になった、医者。

 

医「違うよ!一回転するんだよ!早く!」

 

言われるがままに台の上で一回転。

おい、だからなんで急にタメ口なんだよ。

どんな距離の取り方してんだ、童貞か。

 

医「止まらないで!3回転して!」

医「違うって!左向いて!」

医「早く腰上げて!!なにしてんの!」

 

めっちゃ怒るやん。

ずっとタメ口やん。

しかも、左向きとか言われてない動きやん。

 

ずっと横になった台の上でグルグル回転させられる。

台自体もグルグル回転する。

 

この動きをアイアンハートタカシはこなしていたと言うのか?

診察終わりのあの清々しいタカシの顔が信じられない。

嘘だろ、この動きめちゃくちゃ激しいぞ。

 

テンパった私、右と左の違いが分からなくなり、「お茶碗持つ方!お箸持つ方!」と言うかつての母の言葉が脳内にリフレイン。

 

医「そうじゃない!左斜め前を向くんだよ!」

医者の怒声がピークに達する。

 

思わずガラス越しの医者に向けて鬼ギレの視線を向ける。

 

医「もう少し左を向いて、、、ください」

医者、急に敬語になる。

 

検査終了。

訳がわからない時間だった。

アイアンハートタカシに対するリスペクトだけが急上昇する初めての体験だった。

 

 

そして、「腹痛サラリーマン、はじめての下剤」へ。

 

1時間後、大井町線の中で顔面蒼白になっている腹痛サラリーマンの姿が。

 

トイレから出れねえ。

 

みんな、薬物と下剤には手を出すな。

そこにピースは無い。